このスタジアムは開かれたグランド,非対称かつ多彩な観客席を持っていることが特徴である。
短工期,ローコストという条件のもとで,多様な形態に対しての構造計画をどのように考えるかが重要であった.構造体を内側と外周部とに分け,さらに円周方向を適当に分割して全体を10のブロックに分けて計画し,各部位で適切な構造を採用した.特に外周部のスタンドでは,コンコースから下部を現場打ちRC造のプレストレス構造とし,上部は,形態が複雑なこと,見える架構となること,繰り返し部分が多いことなどからプレキャストコンクリート構造(PCa造)とした.
PCa造は同一形状の部材を工場で繰り返し生産し,高品質,高精度なものが得られ現場施工の時間や仮設部材を低減できる.しかし,上部スタンドの端部では形態が特殊となり,またスタンド下部には2種類の吊床を設けること,コンコース外周部の店舗では形態にバリエーションを設けることなど,標準形とは異なる構造が必要となるためこれらの部分は鉄骨造を用いた.
ゲートブリッジ,照明塔はそれぞれ鉄骨造の構造であるが,完全に独立した構造ではなく,PCa造と一体としてすることによりコストダウンを図った.但し,力の伝達を図るために接合部分のディテールには相応の工夫を用いている.